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低血糖症と精神疾患治療の手引

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低血糖症と精神疾患治療の手引
−心身を損なう血糖やホルモンの異常等の栄養医学的治療ー

●柏崎良子著
書籍 A5版 並製/238頁 1,890(税込)  ISBN978-4-903748-00-9 C0047

キリスト教の観点から模索した栄養医学の成果
 低血糖症から始まって、来院する患者さんの病気ひとつ一つを治そうとしているうちに、栄養医学について多くの知識と改善例を得てきました。その成果を栄養医学に関する一連の本に記してきました。低血糖症の精神面での症状改善を模索している中で、精神疾患の要因もある程度捉えることができて、今回紹介することができました。腸内の有害細菌や脳へのペプチドや有害金属の浸入のこともわかり、治療成果を得ることができつつあります。皆様のご健康と魂の幸いを心より願い、この本がそれに用いられればと準備いたしました。



本書序文より
「私たちが栄養医学を始めた経緯」 

柏崎久雄        
マリヤ・クリニック事務長
潟ーゼフ代表取締役
低血糖症治療の会理事長
千葉福音キリスト教会牧師

 妻の良子は、医学部在学中から精神的な不安定、脱力感、うつ病で苦しんでいました。今から思えば、低血糖症特有の不器用さ、偏り、感情の変動があったのですが、私はちょっと変わった人だな、と感じながら、誕生日が同じというだけの関心しかありませんでした。学内で出合う時に、だんだん暗い印象になっていったのはわかりました。ところが、ある晩、私が酒を飲んでいい気分になって電車に乗ると、顔を輝かせた内田良子さんがいました。「何か良いことがあったのですか。」と酔っ払った勢いで軽く聞くと、「教会に行ってきました。」と答えました。「神様っているのですか。」という問いに、「ハイ。」と、うれしそうに言うのです。私は話しに行き詰まり、そのまま離れましたが、今まで神がいるなんて考えたことがなかったものですから、ショックですっかり酔いが醒めてしまいました。それをきっかけに私も教会に導かれ、クリスチャンになったのです。

 彼女は学業が忙しいからという両親のアドバイスもあって教会から離れたのですが、1年後すっかり体調を壊し、うつ状態になって教会に戻ってきました。私は横浜市大大学院経営学研究科で博士課程を目指しながら、教会でも既に青年のリーダーとして活動していました。そんな時、牧師夫人が私たちに結婚を勧めたのでした。彼女は、体調の悪い中、医者ではなく宣教師を目指すというし、私は大学の教員を目指していたものですから、すぐさま「無理です。」と断りました。ところが彼女は学業もうまくいかず、精神的不安定は悪化するばかりですから、このままでは人生めちゃくちゃになるのではと心配になりました。信仰者としては、自分だけ順調に歩んで、私を教会に導くきっかけになった人が苦しんでいるのを放っておくわけにもいきませんでした。しかし、研究の道は厳しいですから、人のことなど考えずに努力しなければ先に進めません。大変な葛藤の末、私を必要とする一人の人を守るだけでも人生の意義はあると判断し、博士課程をあきらめました。更に、信仰者として人を助け、魂の救いに導く働きができたら幸いであると考え、牧師になることを決心しました。彼女の病態改善が簡単にはいかないと判断したこともあります。牧師として、妻と一緒に貧しく誠実に暮らすことも意義のある生き方であると考えるほどに、私の人生観はキリスト教によって変えられていました。  

 大学院修了後、直ぐに結婚して神学校に入りましたが、妻の方は学業不振で卒業できませんでした。私は神学校に通いながら、炊事洗濯買物をし、毎日2時間くらい妻と話をしました。妻はそれまで、学業に一生懸命で、人と深い話をしたことがない、ということでした。症状としては完全な鬱病で、食事中も箸を持ったまましばらく動きが止まってしまう有様でしたから、私は自分のできることの限界を悟って絶望したものです。カウンセリングの本を読みあさり、幾つかの論文を書いたほどでしたが、妻の症状は好転しません。私も過労とストレスの多さで全身が蕁麻疹になったり、不整脈になったりしました。自分では性格が良いと思っていたのですが、いつしか妻に暴言を吐いたり、手を上げたりして、とても神学生とは思えない自分の姿に、どうしようもないあせりを覚えていました。献身的になったら、妻が変わると思っていたうぬぼれと精神疾患のむごさに悲嘆しながら神に祈り、妻もまた自らを対処できない悲しみの中、神に祈っていました。

 そんな時、雑誌に載っていた柿谷カウンセリングセンターの柿谷正期先生の資料から低血糖症のことを知りました。症状としては、よく当てはまり、ワラにもすがる思いで、食生活を変え、砂糖を断ち、胚芽米を摂り、ビタミンBの摂取を多くするようになりました。長男の出産後、少し元気を取り戻し、結婚1年半後に医師国家試験にも受かりました。薄紙をはがすように鬱病の症状が取れてきた妻は、医師として働きながら次女も産み、千葉市に引っ越してキリスト教会をゼロから始めた私の活動を経済的に支えてくれるようになりました。疲れると症状が出る妻を気遣いながら、二人で一生懸命働き、支え合いました。

 このような中で、私は原因分析のカウンセリングよりも、良いこと正しいことを教えながら患者と共に生きるほうが、精神疾患の治癒には効果的であると判断し始めました。今で言うコーチングの考え方でしょうか。困難な中にあっても神を信じ祈る、という霊的・信仰的な姿勢はとても大切です。未熟な若者であっても、夫婦として支えあいながら、多くの経験をし、人格を形成していくことは大事です。失敗や挫折を体験しながら、毎日生きるために働くということが私たちを強くしました。子供たちの存在は、なんと私たちを励ましたことでしょう。

 妻は千葉大呼吸器内科に入局し、研修医、医局研究生として治療の傍ら医学博士を目指しましたが、大病院の診療に違和感を覚えていました。低血糖症の名残もあり、人付き合いの下手な妻には、組織の一員としてのチーム医療は難しかったのです。そんな折、不治の病と言われていた患者さんの為に、妻はおもわず手を置いて祈ってしまいました。その方は、その後すみやかに回復し、彼は妻のことを命の恩人と感謝してくださいました。このことも開業の決心に影響を与えました。

 妻は、疲れると心身両面で異常反応を起こしますし、低血糖症のゆえに意識せずに眠ってしまうこともありました。片道50キロの高速道路を含めた通勤の運転中に居眠りをし、「ぶつかる寸前に目が覚めた、感謝だった」、などと帰ってくると私に報告することもありました。実際に事故を起こしたこともあります。通勤の時間は、私はいつも安全を祈って気が気ではありませんでした。

 妻の願いと日々の激しい勤務を思って、私は開業の準備をしました。医者の収入がありながら、教会の働きに多くの支出をしてきた私たちは手持ち資金が30万円しかなく、銀行もあきれて融資を断ってきました。見かねた妻の父が融資をしてくれて、元美容院の内装などをそのまま利用した15坪の小さな診療所で、設備も何もなく一人の事務員と共に開業しました。32歳の妻は、か弱く、ただひたすら診療をするだけで、経営的なことは全て私が担当しました。

 開業(1987.4.7.)後、念願の低血糖症の検査治療を始めました。来院する患者さんの中で低血糖症かと判断した人を、本人の同意のもとで5時間の精密耐糖能負荷検査をすると、殆どの人が低血糖症であることに驚きました。日本では治療例のない低血糖症を試行錯誤で治療しながら、多様な低血糖症のパターンを見出し、治療法を模索しました。低血糖症という病気自体を疑う人々には、岩手大学名誉教授の大沢博教授が朝日新聞に載せた記事によって啓発することができました。診療室の掲示板に貼ったその記事だけが説得力のあるものでした。このような五里霧中の奮闘のなかで、それまで精神科や神経科に通いながら治療効果の見出せなかった患者さんたちに検査の結果、明確な病名と治療の指針を提供できて、感謝され喜ばれました。しかし、治療には多量のビタミンやミネラルを必要とするのに、それを充分に提供する薬品会社もサプリメント会社もないのに失望していました。

 1992年2月、柿谷正期先生の紹介で分子栄養学研究所の金子雅俊所長がわざわざクリニックにおいでくださいました。お話を聞いてみると、私たちがキリスト教の観点から模索していた栄養医学を、身体治療の面では既に実行しておられました。また、治療のために必要な質と量をもったビタミンやミネラルも充分に開発、供給できるすばらしい会社でした。金子雅俊先生からはその後、夫婦共々、分子栄養学研究所の講座で学び、栄養療法についての多くの実践的指導を受けることになり、低血糖症の原因、治療についての研究成果の礎となっています。

 当初、私たちの低血糖症への取り組みは、人々に誤解され、攻撃されました。欧米では、当たり前に取り上げられ、話題になっているのに、と歯がゆかったものです。検査の結果、明確に低血糖症と診断しても、「その病名は医学辞典にない」「こちらの医者が認めない」として、患者さん達が診療を認められず、精神病の言い訳としか理解されませんでした。現在でも、患者さん本人が治療を望んでいても、「精神病は精神科で治せばいい、良い薬は十分ある。」というご家族もあります。しかし、私たちの治療方法は、実施してみると患者さん自身が改善を実感するという自信があります。たとえば、精神安定剤を飲んでいた患者さんが、当クリニックに来院し、応急の対応処置をされると泣き出してしまいました。「私はこれまで泣きたくても泣けなかった。感情を出せて、うれしい。」と率直な表現をし、ホッとして帰っていかれました。

 1997年4月に、ともかく10年間やって来れたことを感謝し、栄養療法を通院している患者さんに知ってもらいたいという願いで、これまでの治療の成果としての栄養療法の資料を教会の輪転機で印刷した分厚いものをホッチキスでとめ、500部を無料配布しました。ところが、瞬く間になくなり要望が強いので、さらに2000部を印刷して500円で販売しました。これも直ぐ売切れてしまいましたので、急遽編集して「栄養療法の手引」(147頁)として1998年4月に3000部を自家出版しました。宣伝もしていないのに本の影響は大きいもので、その出版をもとに雑誌や新聞、そしてテレビやラジオにも取り上げられました。増補版の出版の後、2001年1月には「栄養医学の手引」(295頁)を出版し、2004年5月に「低血糖症治療の手引」(175頁)を潟ーゼフより出版しました。

 この「低血糖症治療の手引」の出版後、低血糖症の治療を始める医療機関が次々に出てきたのは感謝でした。医師からの問い合わせも多く、できるだけの対応をしたつもりです。しかし、実際のところ、薬をサプリメントに代えただけで、栄養医学や低血糖症についての説明もなく、高額なサプリメントを販売しているだけの医療機関が多いようです。私たちは、このようなことを過渡期的な状況と捉えておりますが、このままでは栄養医学そのものに対する誤解や偏見を与えてしまうのではないかと心配しています。

 栄養医学というのは、個々人によって対処が異なり、また体調や状況によっても異なるので、個別的な栄養指導と自己管理が必要なのです。従って、しっかりとしたデータに基づいた患者個人の体質や病態把握が必要であり、サプリメントの効果や用法を患者本人か世話をする家族が理解していなければならないのです。その為には、研修を受け訓練されたスタッフが丁寧に患者さんと個人的に対応して、アドバイスをしなければなりません。上記のような他の医療機関から流れてきた患者さんの誤解や偏見を解いて、きちんと栄養医学を理解させることは却って難しいようです。栄養外来とかサプリメント外来といって、サプリメントだけで治療をしてしまおうとして、内科的な治療を行わないためにかえって重症になってしまい、当クリニックにきた患者さんもおりました。そのようなクリニックが一概に悪いわけではなく、多くの治療成果をあげているかとは思うのですが、栄養医学というのは、手間のかかる治療ですから、私どもも自ら注意しております。

 いわゆる西洋医学、近代医学は対症療法であって、近年、その弊害や限界も取りざたされ、代替療法として他の治療法も模索されてきました。本文にある腸内の有害細菌も、抗生物質の過剰投与が原因の一つであるとされています。ヨーロッパでは、簡単に抗生物質を投与すると免疫力を形成することを妨げてしまうとして、慎重な処方がされているようですが、日米では抗生物質を処方していないと、医療責任を問われることもあり、効き目のある処方をせざるをえないようです。

 休養を取れば治るのに、強烈な薬や栄養ドリンクを飲んで仕事をするのは身体にとって辛いものです。急いだ治療は子供たちには更に厳しいものとなって心身に異常をきたすのです。人間としての本来の生き方を損なっているのを是正せずに、単にサプリメントを摂って健康になるのを願う、というのは無理があります。そして精神にも変調をきたしてくるのです。

 私たちは、低血糖症の治療に取り組んで多くのことを学びました。忙しさの中に、子供にも厳しくあたり、非行をさせてしまいました。教会をゼロから始め、クリニックも資金もなく始めながら五人の子供を育てるということは、本当に大変でした。そういう中で、家内だけでなく私までも低血糖症になってしまい、性格が悪くなり、気分の変動が激しくなったのでした。5時間のOGTTの途中で、身体中が硬直して冷たくなり起きていられなくなりました。自らも低血糖症であったことを知り、解決の糸口を見つけたようでホッとしたことを忘れることはできません。

 聖書には、「苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。私はそれであなたの掟を学びました。」(詩篇119編71節)という聖句があります。私たちは低血糖症で大変な苦労をしてきました。でもだからこそ、低血糖症で苦しんでいる方々を治したいのです。低血糖症の患者さんの家族の方々が、その症状を恥ずかしく思わないで、失敗や挫折を暖かく見守り、本人の治癒力・回復力を信じて治療を助けていただきたいと願っています。

 低血糖症から始まって、来院する患者さんの病気ひとつ一つを治そうとしているうちに、栄養医学について多くの知識と改善例を得てきました。その成果を栄養医学に関する一連の本に記してきました。低血糖症の精神面での症状改善を模索している中で、精神疾患の要因もある程度捉えることができて、今回紹介することができました。腸内の有害細菌や脳へのペプチドや有害金属の浸入のこともわかり、治療成果を得ることができつつあります。

 皆様のご健康と魂の幸いを心より願い、この本がそれに用いられればと準備いたしました。ご質問、アドバイス、ご意見、そして治癒報告などメールで下されば、返事できると思います。2007.4.